クラブの帰りにはよく3、4人で駄菓子屋に寄り、ジュースやアイスを買って狭く暗い土間で食べた。そこは和服を着たばあさんが一人でやってる店だった。みかけはばあさんだが、中身は肝の据わったおっさんで、言葉使いもきっぷの良いものだった。中学校の向かいにあり、美術の写生の時間はぜんざいを食べさせてくれたり、校則違反をする生徒の側に立ち、先生に啖呵を切るようなばあさんだった。
見た目はイカツイが中身はおばさんの私は全てが真反対で相性が良かったのか、高校生になっても一人で行って、炬燵まで上がり込んでいた。
ばあさんがボロボロの若い時もらったラブレターを見せてくれたことがある。あの時はばあさんが少し女に見えた。
またある時は週刊誌の政治家の汚職の記事を見せて、『あんたも偉くなった時、逃げ道は作っとかんといけん。』と教えてくれた。何を言うやら。
歯科大の入試小論文のテーマは『ゆずり葉について書け』。私はばあさんの事を書いた。
大学生になり帰省して店に行くと、行く度にアイスクリームをたくさんくれた。
ばあさんが入院したと聞いて、病室に行くと、『遅かったな。』と言われた。
文章が下手でうまく書けないが青春時代の帰り道になくてはならない店だった、人だった。
太田のおばちゃん ありがとう。